向田邦子『思い出トランプ』収録の「かわうそ」「だらだら坂」を読む。小説を読んでいるというよりも、寸分の狂いもなく造られた建築物か芸術作品を観賞しているような感覚である。特に「かわうそ」は凄い。気働きがあり情が濃いと思っていた妻に潜む残酷さが、後半部分で炙り出される。読んでいて背筋が寒くなった。

かわうそ」の中に、「志を得ない勤めの鬱憤」というフレーズが出てくる。ここ数日のムシャクシャの原因は、結局のところこれか。